電磁気学 静電場と流れの場

ここでベクトル場についてあやふやになっている可能性があるので一度捉えなおしたい。

粒子系の状態が有限個のベクトルで表されるのに対し、空間の状態は無限個、しかも連続無限個のベクトルで記述される。流体力学では体積変化のしない非圧縮性の流体では、空間の各点における流体の速度u(r)によって流体の運動状態が記述される。このように状態が空間のすべての点で与えられる量によって記述される場合、その量をと呼ぶ。特にそれがベクトル量である場合にはベクトル場という。

 電場を定常流の流体とみなす。流体の中でも空間に任意の閉じた曲面Sをとる。曲面を面積ΔSの微小な部分に分割し、面上の点Pにある一つの微小部分に注目する。

 


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図1 時間Δtの間に面積ΔSを通過する流体の体積

 

P点における流速をuとすれば、ある時刻にPにあった流体はΔtの後にはPからみてuΔtの位置に達している。したがって図1のように底面積ΔSで斜辺がuΔtの流速の方向に傾いて伸びた柱状の立体を考えると、その体積ΔΩはΔtの間にΔSを通過した流体の体積にあたる。P点において閉曲面に垂直な外向きの単位ベクトルをとすれば、体積ΔΩは
ΔΩ=(u・n)ΔtΔS
と表される。ΔΩを加え合わせてΔS→0の極限をとると
 Δt\int_{S}{\vec{u(r)}・\vec{n(r)}}dS
が得られる。これは、閉曲面Sの内から外へ、時間Δtの間に流れ出る流体の量を表す。非圧縮性の流体では、閉曲面Sの内部のどこかで湧き出していなければならない。したがってΔtで割って単位時間当たりに直すと、
 \int_{S}{\vec{u(r)}・\vec{n(r)}}dS=Sの内部で単位時間当たりに湧き出す流体の量
という関係が得られる。これは静電場のガウスの法則と全く同じ形をしている。
 静電場の場合電荷がなければ電場も0である。流体の場合はどうだろう。流体の場合、湧き出し、吸い込みがなくても流れの場が存在できる。それは渦が生じた場合である。

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図2 流体の渦

渦周りに閉曲線Cを取り、線積分するとuは流速、は接線方向の単位ベクトルであるから

\int_C\vec{u(r)}・\vec{t(r)}ds≠0

となる。静電場では=0にならないといけない。つまり静電場は渦なしの場にあたる。これで静電場の性質について

\int_s{\vec{E}(r)・\vec{n}(r)}dS=\frac{1}{ε_0}\int_v\rho(r)dV

\int_c{\vec{E}(r)・\vec{t}(r)}ds=0

の意味が明らかになった。ガウスの法則だけでは静電場の性質を完全に言い尽くされていない。渦なしの条件も加えて、初めて静電場の法則が完成するといえる。この2つの式が静電場の基本法則になる。