電磁気学 ポアソン方程式

真空中の静電場の基本法則は微分形の局所的な法則に書き直された。すなわち

∇・\vec{E}(r)=\frac{\rho(r)}{ε_0}\tag{1}

∇×\vec{E}(r)=0\tag{2}

となる。また、静電場が渦なしの条件を満たすことから、それが静電ポテンシャルΦ(r)によって

E(r)=-∇Φ(r)

この式を(1)式に代入すると

∇^2\phi(r)=-\frac{\rho(r)}{ε_0}

∇・∇=Δから電荷のない真空中では

ΔΦ(r)=0

これをラプラスの方程式という。

 ある電荷を与えられたときポアソンの方程式を満たすポテンシャルΦ(r)がみつかったとしよう。そのときこのΦ(r)にラプラス方程式を満たす関数φ(r)を加えて

Φ’(r)=Φ(r)+φ(r)

という関数を作ると

∇^2\phi'(r)=∇^2\phi(r)+∇^2\varphi(r)

\nabla^2\varphi(r)=0より

\nabla^2\phi'(r)=-\frac{\rho(r)}{\varepsilon_0}

 となりポアソン方程式を満たす。

 このように、電荷分布を与えても、ポアソン方程式をポテンシャルというだけでは無数の可能性がある。そのため条件を付ける必要がある。

例えば|r|→∞でΦ(r)→0というような領域の境界の条件を加えると一つに決まる。このように注目している領域の境界でポテンシャルに課せられる条件を、境界条件という。ポアソン方程式からその解として定まる静電ポテンシャルについて、その一般的な性質をいろいろ知ることができる。

 (1)静電ポテンシャルは、電荷のないところでは極大、極小にならない。

 関数が極値を取るときは一次微係数が0で二次係数は正か負の値をとって0にならない。電荷のない点でポテンシャルの満たすべきラプラス方程式\nabla^2\phi(r)=0であるからρ(r)=0の点でΦ(r)は極大、極小になりえない。

 (2)ある領域の内部に電荷がなく、領域の境界で\phi(r)=\phi_0境界条件が課せられているときには、ポテンシャルは領域内のすべての点で\phi(r)=\phi_0となる。

 ポテンシャルΦ(r)が教会で一定値を取り、かつその領域内で空間変化をしているとすれば、Φ(r)は領域内のどこかの点で最大または最小になる。ところが、領域内に電荷はなく、また(1)によれば電荷のない点でポテンシャルは最大、最小になりえない。したがって、ポテンシャルが空間変化することはありえず、領域内のすべての点で\phi(r)=\phi_0となることがわかる。

 この性質を用いてポアソン方程式の解について次の重要な結論を導くことができる。

 電荷分布と境界条件が与えられているとき、ポアソンの方程式の解はただ1つに決まる。

すなわち、同じポアソンの方程式と同じ境界条件を満たすポテンシャルが2つ以上存在しないということである。

 これによりポアソンの方程式から静電場が一つに決まる。つまり、ガウスの法則と渦なしの法則により静電場の性質を言い尽くすことができる。こうしてこの2つの法則を’静電場の基本法則’と呼ぶことができる。

電磁気学 静電場と流れの場

ここでベクトル場についてあやふやになっている可能性があるので一度捉えなおしたい。

粒子系の状態が有限個のベクトルで表されるのに対し、空間の状態は無限個、しかも連続無限個のベクトルで記述される。流体力学では体積変化のしない非圧縮性の流体では、空間の各点における流体の速度u(r)によって流体の運動状態が記述される。このように状態が空間のすべての点で与えられる量によって記述される場合、その量をと呼ぶ。特にそれがベクトル量である場合にはベクトル場という。

 電場を定常流の流体とみなす。流体の中でも空間に任意の閉じた曲面Sをとる。曲面を面積ΔSの微小な部分に分割し、面上の点Pにある一つの微小部分に注目する。

 


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図1 時間Δtの間に面積ΔSを通過する流体の体積

 

P点における流速をuとすれば、ある時刻にPにあった流体はΔtの後にはPからみてuΔtの位置に達している。したがって図1のように底面積ΔSで斜辺がuΔtの流速の方向に傾いて伸びた柱状の立体を考えると、その体積ΔΩはΔtの間にΔSを通過した流体の体積にあたる。P点において閉曲面に垂直な外向きの単位ベクトルをとすれば、体積ΔΩは
ΔΩ=(u・n)ΔtΔS
と表される。ΔΩを加え合わせてΔS→0の極限をとると
 Δt\int_{S}{\vec{u(r)}・\vec{n(r)}}dS
が得られる。これは、閉曲面Sの内から外へ、時間Δtの間に流れ出る流体の量を表す。非圧縮性の流体では、閉曲面Sの内部のどこかで湧き出していなければならない。したがってΔtで割って単位時間当たりに直すと、
 \int_{S}{\vec{u(r)}・\vec{n(r)}}dS=Sの内部で単位時間当たりに湧き出す流体の量
という関係が得られる。これは静電場のガウスの法則と全く同じ形をしている。
 静電場の場合電荷がなければ電場も0である。流体の場合はどうだろう。流体の場合、湧き出し、吸い込みがなくても流れの場が存在できる。それは渦が生じた場合である。

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図2 流体の渦

渦周りに閉曲線Cを取り、線積分するとuは流速、は接線方向の単位ベクトルであるから

\int_C\vec{u(r)}・\vec{t(r)}ds≠0

となる。静電場では=0にならないといけない。つまり静電場は渦なしの場にあたる。これで静電場の性質について

\int_s{\vec{E}(r)・\vec{n}(r)}dS=\frac{1}{ε_0}\int_v\rho(r)dV

\int_c{\vec{E}(r)・\vec{t}(r)}ds=0

の意味が明らかになった。ガウスの法則だけでは静電場の性質を完全に言い尽くされていない。渦なしの条件も加えて、初めて静電場の法則が完成するといえる。この2つの式が静電場の基本法則になる。

電磁気学 点電荷の作る静電ポテンシャル

電荷のつくる静電ポテンシャルを求めてみる。位置\vec{r_i}にある点電荷Qiが位置\vec{r}につくる電場をEとすると

\vec{E(\vec{r})}=\frac{Q_i}{4πε_0}\frac{\vec{r}-\vec{r_i}}{|{\vec{r}-\vec{r_i}}|^3}\tag{1}

この\vec{E(\vec{r})}に対して、

\phi(\vec{r})=-\int_\vec{r_0}^\vec{r}\vec{E(\vec{r}')}・d\vec{r'}\tag{2}

を求める。

電場は保存力なので直線の経路をとる。(1)式に(2)式を代入すると

\phi(\vec{r})=-\int_\vec{r_0}^\vec{r_c}\frac{Q_i}{4πε_0}\frac{\vec{r'}-\vec{r_i}}{|\vec{r'}-\vec{r_i}|^3}・d\vec{r'}

と書ける。\vec{r''}=\vec{r'}-\vec{r_i}とおくと、\vec{r_i}は定数より、d\vec{r''}=d\vec{r'}から

=-\frac{Q_i}{4πε_0}\int_{\vec{r_0}-\vec{r_i}}^{\vec{r_c}-\vec{r_i}}\frac{\vec{r''}}{|\vec{r''}|^3}・d\vec{r''}

r''=|\vec{r''}|とすれば、\vec{r''}・d\vec{r''}=r''dr''より、

=-\frac{Q_i}{4πε_0}\int_{|\vec{r_0}-\vec{r_i}|}^{|\vec{r_c}-\vec{r_i}|}\frac{dr''}{r''^2}=\frac{Q_i}{4πε_0}\left(\frac{1}{|\vec{r_c}-\vec{r_i}|}-\frac{1}{|\vec{r_0}-\vec{r_i}|}\right)

 Φ=0の基準点を無限遠にとると|\vec{r_0}|→∞から

\phi(\vec{r_c})=\frac{Q_i}{4πε_0}\frac{1}{|\vec{r_c}-\vec{r_i}|}

と表せる。

複数電荷の場合

\vec{E(\vec{r})}=\frac{1}{4πε_0}\sum\limits_i\frac{Q_i}{|\vec{r}-\vec{r_i}|}

連続分布する電荷のつくる静電ポテンシャル

空間を微小体積ΔViに区切り、点電荷ΔQ_i=\rho(\vec{r_i})ΔV_i

 の集合とみなす。すると

\phi(\vec{r})=\frac{1}{4πε_0}\sum\limits_i\frac{\rho(\vec{r_i})ΔV_i}{|\vec{r}-\vec{r_i}|}

とかける。微小量の和を積分に直せば

\phi(\vec{r})=\frac{1}{4πε_0}\int\frac{\rho(\vec{r'})}{|\vec{r}-\vec{r'}|}・dV'

電磁気学 静電ポテンシャル

点Oから点Pまで、保存力Fを加えて動かすのに要する仕事Wは

W(\vec{r_o}→\vec{r})=\int_\vec{r_o}^\vec{r}\vec{F}・d\vec{r}

電場Eの中に置かれた電荷qは、電場からqEの力を受ける。これを静止させるためにF=-qEを加える。この時必要な仕事は

W=-q\int_\vec{r_o}^\vec{r}\vec{E}・d\vec{r}

となる。

 静電ポテンシャルを「動かすのに要する単位電荷あたりの仕事」として定義する。すると

\phi(\vec{r})=\frac{W}{q}=-\int_\vec{r_o}^\vec{r}\vec{E}・d\vec{r}\tag{1}

と定義される。

Fが保存力でない時、(1)のような関数を定義できない。

次に微分形で表してみる。

 点A(位置)と点B(位置r+Δr)における静電ポテンシャルの差

 ΔΦ=Φ(r+Δr)-Φ(r)

を考える。静電ポテンシャルの定義式より

\phi(\vec{r}+Δ\vec{r})-\phi(\vec{r})=-\int_\vec{r_o}^{\vec{r}+Δ\vec{r}}\vec{E}・d\vec{r}-(-\int_\vec{r_o}^\vec{r}\vec{E}・d\vec{r})

=-\int_\vec{r_o}^{\vec{r}+Δ\vec{r}}\vec{E}・d\vec{r}\tag{2}

ここで点Aと点Bは十分に近いとする。すると

\phi(\vec{r}+Δ\vec{r})-\phi(\vec{r})=-\vec{E}・Δ\vec{r}\tag{3}

ここでΔΦ=Φ(r+Δr)-Φ(r)は

Δ\phi=\frac{\partial\phi}{\partial x}Δx+\frac{\partial\phi}{\partial y}Δy+\frac{\partial\phi}{\partial z}Δz=∇\phi・Δ\vec{r}

であることを用いると(3)式は

∇\phi・Δ\vec{r}=-\vec{E}・Δ\vec{r}

よって

\vec{E}=-∇\phi

積分で表すと

\phi(\vec{r})=-\int_\vec{r_o}^\vec{r}\vec{E}・d\vec{r}\tag{4}

微分で表すと

 \vec{E}=-∇\phi

 

 電場Eは静電ポテンシャルΦを用いればΦの勾配にマイナスをかけたものとして与えられる。

 マイナスがかかることで負のポテンシャル勾配の場合に正の向きの力がはたらく

 ポテンシャルの勾配(変化率)が大きいほど電場は大きい。

電磁気学 ガウスの法則 微分形

静電場の法則を局所的な法則に書き換えるために積分形を微分形に書き直す。

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図1

図1の微小閉曲面で面積分 \int_{S_0}A・ndsを考える。x軸に垂直な面で面積分すると\int_{S_0x}\vec{A}(x,y,z)・\vec{n}dsである。Sx上の積分でy→y+Δyz→z+Δz

だけ積分するから

\int_{S_x1}\vec{A}(x,y,z)・\vec{n}ds=\int_{y}^{y+Δy}\int_{z}^{z+Δz}\vec{A}・\vec{n}dzdy

Sx1上の法線ベクトルはx軸負の向きだから\vec{n}=\vec{-e_x}より

\vec{A}(x,y,z)・\vec{e_x}=A_x(x,y,z)より

\int_{Sx₁}\vec{A}(x,y,z)・\vec{n}ds=-\int_{y}^{y+Δy}\int_{z}^{z+Δz}\vec{A_x}(x,y,z)dzdy\tag{1}

x+Δxでのx軸に垂直な面をSx₂とするとSx₂上の法線ベクトルはx軸正の向きだから\vec{n}=\vec{e_x}より

\int_{Sx₂}\vec{A}(x,y,z)・\vec{n}ds=\int_{y}^{y+Δy}\int_{z}^{z+Δz}\vec{A_x}(x+Δx,y,z)dzdy\tag{2}

a→a+hまでの積分(h:微小量)で

\int_{a}{a+h}f(x)dx=F(a+h)-F(a)=f(a)hであるから(1)+(2)して

\int_{Sx₁}\vec{A}(x,y,z)・\vec{n}ds+\int_{Sx₂}\vec{A}(x,y,z)・\vec{n}ds

=-\int_{y}^{y+Δy}\int_{z}^{z+Δz}\vec{A_x}(x,y,z)dzdy+\int_{y}^{y+Δy}\int_{z}^{z+Δz}\vec{A_x}(x+Δx,y,z)dzdy

=A_x(x+Δx,y,z)ΔyΔz-A_x(x,y,z)ΔyΔz

右辺にΔxをかけると

=\frac{A_x(x+Δx,y,z)-A_x(x,y,z)}{Δx}ΔxΔyΔz

=\frac{A_x(x+Δx,y,z)-A_x(x,y,z)}{Δx}ΔV

=\frac{\partial(A_x)}{\partial(x)}ΔV

すべての面で合わせると

\int_{ΔS₀}\vec{A}(x,y,z)・\vec{n}ds=(\frac{\partial(A_x)}{\partial(x)}+\frac{\partial(A_y)}{\partial(y)}+\frac{\partial(A_z)}{\partial(z)})ΔV

=∇・\vec{A}ΔV

この微小面積を集めたS₀は

\int_{S_0}\vec{A}(x,y,z)・\vec{n}ds=\int_{V_0}∇・\vec{A}dv

これをガウスの定理と呼ぶ。

 

 

電磁気学 ガウスの法則

 電気力線

電気力線の接線はその点における電場の向きを表す。電気力線は正の電荷から出で負の電荷に入るか、無限遠まで伸びている。何もない空間で途切れることはない。電場の定義より電気力線の密度は電場の大きさに比例している。電気力線の総数をN本、面積をSとすれば

|E|=電気力線の密度の定数倍=k\frac{N}{S}\tag{1}

 

 ガウスの法則

空間に点電荷Qを置き、それを取り囲む閉曲面Sを設定する。

 

閉曲面の微小面積ΔSを考えると平面とみなせる。微小面ΔS電気力線を考えるが、微小面ΔSと電気力線は直行しているとは限らない。直行してないと密度が定義できないので電気力線に垂直なΔS⊥を考える。

 

 

 

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電気力線に垂直な面

 

\vec{n}を法線ベクトルとすると電気力線の向きと法線ベクトルのなす角度はθであり、

\vec{E}・\vec{n}=\vec{|E|}cosθ\tag{2}

 (1)より\vec{|E|}=k\frac{ΔN}{ΔS⊥}\tag{3}

 ΔS⊥=ΔScosθ\tag{4}

(2),(3),(4)より

ΔN=\frac{1}{k}\vec{E}・\vec{n}ΔS\tag{5}

これを閉曲面全体にわたって足し上げればいいのでΔS→0の極限をとったとき

N=\int_{S}\frac{1}{k}\vec{E}・\vec{n}ds\tag{6}

実はこの積分の値は、閉曲面Sの形に依存しない

電場の本質を考えればわかりますが電荷が変わらなければ電気力線の本数も変わりません。

てことで閉曲面がどんな形であろうと答えは変わらないのでできるだけ簡単な半径Rの球面を考えてみましょう。

半径Rの面積は4πR^2

電荷Qの電場は

E=k\frac{Q}{4πε_0R^2}

これを(6)式に代入し面積分すると

\int_{S}\vec{E}・\vec{n}ds=\frac{Q}{ε_0}

 が成立する。これをガウスの法則と呼ぶ。

 

電磁気学 電場

遠隔作用と近接作用

遠隔作用 : 遠く離れたものに空間を飛び越えて直接働くもの

       (ex 万有引力

 

近接作用 : 間の空間にある種の変化が生じ、それが力を伝える

        (ex 電場)

 

電場は実際は存在しないがあると想定して考える。

電場を次のように定義する。

 

\vec{E} = \frac{\vec{F}}{Q}     [ \frac{N}{Q}]

 

 Fにクーロンの法則を適用すると

 

\vec{E} = \frac{q_1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{\vec{r}-\vec{r_1}}{r-r_1}